大判例

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名古屋地方裁判所 昭和43年(ワ)3605号 判決

〔判決理由〕請求原因二、の事実は当事者間に争いがない。

以上争いのない請求原因一、二、の事実によれば、被告松尾は民法第七〇九条、被告会社は民法第七一五条第一項により、本件事故によつて生じた損害を賠償すべき義務がある。

なお、右争いのない事実と<証拠略>によれば、被告松尾は本件事故を惹起した大型貨物自動車の運転助手であつたこと、死亡した李尚敏はこの自動車の運転手であつたこと、この自動車は昭和四三年一月七日正午過ぎ名古屋市内の被告会社を出発し、岡崎市内で積荷を積込んで、目的地である仙台市へ向う途中であつたが、同日午後一〇時三五分頃横浜を過ぎてから、それまで運転していた李尚敏が同乗助手の被告松尾に「今日は日曜だから車は無い、それに俺が教えてやるから。」と言つて同被告と運転を替り、それからは助手席で、先行車に接近したり脇から出て来る車があるときはその都度ブレーキを踏むように注意したり、アクセルのふかし方を注意したり凡そ一五分進行したとき、被告松尾が狼狽と運転未熟のため、ブレーキを踏むべきところにアクセルを踏んでしまつて、信号待ちしていた先行の大型貨物自動車に激突して本件事故が惹起されるに至つたことが認められるから、以上の事実によれば、本件において李尚敏は自賠法第三条の「他人」には該らないものというべきである。

前示のとおり、本件事故は直接には被告松尾が狼狽と運転未熟のため、ブレーキを踏むべきところを誤つてアクセルを踏んでしまつたことの過失に原因するのであるが、<証拠略>並に争いのない請求原因一、二、の事実によれば、李尚敏は本件自動車の運転手、被告松尾は運転助手であつて、同被告は自動車の運転免許を有しない者であり、李尚敏はそのことを知つていたこと、それにも拘らず李尚敏は大型貨物自動車である本件自動車の夜間走行中「今日は日曜だから車は無い、それに俺が教えてやるから。」と、無暴にも運転資格を有しない被告松尾に右自動車の運転を交替し、助手席でブレーキの操作やアクセルのふかし方などを教えていたこと、ところが被告松尾は右のように免許も有しない運転技術の未熟者であつたため、信号待ちしていた先行車を発見して、狼狽と運転未熟のため、ブレーキとアクセルを踏み間違えて本件事故を惹起するに至つたことが認められるから、本件事故は李尚敏が自動車の運転免許を有しない被告松尾に運転を交替したところの過失にも起因し、しかもそれが主要な原因をなしているといわなければならない。而して、その過失の割合を勘案すれば、李尚敏の過失が七〇%、被告松尾のそれが三〇%と認めるのが相当である。 (藤井俊彦)

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